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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页
「では、及ばずながらこのほうも手を貸そう」と鴻山は立ち上がったが、何か思いだしてスタスタと異人墓の蔭へ戻って行った。
そこに一人の連れがいた。武士ともつかず医者ともつかぬ風采の男。墓の蘭字や形を写していたが、鴻山から事情を話され、後について一八郎の側へやって来た。
「わしは江戸の平賀源内、伝書鳩は面白うござるな、ご迷惑でも一つご同伴願いたい」
また一人の加勢が殖えて三人連れ、異人墓の丘を下りて、鳩の飛んだ方角へ急ぎだした。
一方、住吉村の木立の中、荷抜屋仲間の隠れ屋敷。
そぼろ助広の大刀が、椎の樹の下――万吉の頭の上に――きらりと三尺の虹を描いた。
真ッ二つ! 孫兵衛の息と手が、さっと放たれようとした刹那、甲比丹の三次やほかの者たちと、こっちの縁側にいた見返りお綱が、
「そんな据物斬りがあるものか!」
駈けだして行って、お十夜の手を遮ってしまった。
「危ねえッ、何を邪魔するんだ」
「だって、罪じゃあないか」咎めるような美しい眼、「据物斬りを見せるといったくせに、自由の利かない人間をバッサリなんぞは曲がない」
「いやにお前は庇い立てするな」
「それや悪党にだって、少しぐらいの慈悲心はあろうじゃないか。