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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页
急がないと、とてもだめです。なにしろ、めちゃめちゃにやられているんで、血が、血が……」
誰かと思うと、先に別れていった黙蛙堂。
どんな大変に遭遇したのか、わけも呑みこめないうちに、独り合点をして、またもと来たほうへ駈け戻った。
わけを糺している暇もない急き方なので、源内は、とにかく駕を回して、先へ急いでゆく黙蛙堂について行った。
高津の前を越えても、まだ走り続けるので、いったいどこまで行くのかと思っていると、龍珠院の外をすぎてやがて一面の草原。
野中の観音と、産湯清水の別れ道を東へとって来た様子だが、なおも止まろうとはしない。
この平地へ出てから、低く傾いた二日の月が、ほのかに照らしていることに気がついた。そして、駕の中から野末をすかしてみると、すぐそこに、一条の流れが、銀流のように見える。
源内は驚いたさまで、
「猫間川じゃないか、ここは?」
と訊ねたが、黙蛙堂は耳に入らないで、駕屋が、
「小橋と玉造村の間です」と答えた。
「おい、おい、黙蛙堂さん、いったいどこまで行くのだい?」と、源内が、たまらなくなってこう叫ぶと、黙蛙堂は、やっとその川べりの、土橋の袂に立ち止まって、