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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页
大鳥氏が揺り起すと、お豊はやっと目を覚して、キョロキョロあたりを見廻している。
「不二子は? 不二子は大丈夫か」
「ヘエ、お嬢さまでございますか」乳母は寝ぼけ声で答える。
「お嬢さまなら、次の間におやすみでございますよ。ホラ、ごらんなさいまし、ああして、よくおよってございます」
お豊が指さすのを見ると、開け放ったドアの向うのベッドの中に、不二子の寝姿が見える。アア、やっぱり不二子には別状なかったのかと、大鳥氏はホッと安堵した。
「マア、わたくし、居眠りをしていたのでございましょうか」
お豊はやっとそれに気づいた様に、頓狂な調子で云った。
「そうだよ。お前にも似合わぬことではないか。お前、あの黄金仮面の賊が、この部屋に忍び込んだのを、何も知らないでいたのだね」
「エッ、何でございますって? あの化け物がこの部屋に。それは本当のことでございますか」
乳母は容易にそれが信じられぬ体だ。いや乳母のお豊ならずとも、誰がこの不思議を信じることが出来よう。窓は皆中から締りがしてある上に、その外には頑丈な鉄格子がはまっている。見る所、どの窓にも別段異状はないのだ。又唯一の入口のドアには鍵をかけ、青山が見張りをしていた。