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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页
「モロッコの蛮族」
(その降り口は、さい前怪賊自身が教えてくれたのだ)だが、流石の怪物も、不二子さんを連れ出す程の魔力はなかったと見えて、彼女はちゃんとそこにいた。
令嬢さえ取返せば、明智の目的の一半は達したのだ。慾ばって二兎を追うよりも、一先ず不二子さんを大鳥家に連れ帰るのが上分別だ。
不二子さんが恋人の正体を知らぬ筈はない。この美しい娘さんこそ、賊と語り彼の素顔に接した、日本中でたった一人の証人だ。その不二子さんを取返したからには、もう賊を捕えたも同然ではないか。
と云う訳で、明智の黄金仮面が、相手の気づかぬを幸、怪賊になりすまして不二子さんを自動車へ連れ込んだのである。黄金仮面の変装が、この際ハッキリ役立った訳だ。
「モロッコの蛮族」
お話は再び自動車の中に戻る。
黄金仮面を取り去った明智の素顔を見ても、不二子には、それが何者であるか分らなかった。彼女は明智に会うのは今が初めであった。
「あなたは、僕を御存知ないでしょうね。併し、決して心配なさることはありません。お父様のご依頼で、あなたをお迎えに来た明智というものです」
不二子は明智小五郎の名を知っていた。彼女の恋人である黄金仮面が――あの万能の巨人でさえも、兼々恐ろしい敵だと云っていた名前である。