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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

大夜会

名探偵明智小五郎が殺された。しかもその死体が黄金仮面一味の者によって、盗み去られてしまった。世論が沸騰しない筈はない。新時代の恐怖「黄金仮面」に配するに、一代の人気者明智探偵の死体紛失だ。かくも激情的な事件が又とあろうか。

素人探偵は果して絶命したのであろうか。若しや重態のまま、賊の巣窟にとじこめられ、死にまさる責苦を味っているのではあるまいか。そして、賊の方では、この名探偵を人質として、更に次の攻撃準備をととのえつつあるのではないだろうか。

よると触るとその噂で持ちきりだ。ある者は明智は已に絶命したと云い、あるものはまだ生きていると主張し、ここかしこで議論の花が咲いた。中にはこれを種に賭を始める者さえあった。

大夜会

それから一週間程、警視庁のやっきの捜査も空しく、明智小五郎死体紛失事件は何等の進展を示さなかった。明智の行衛は勿論、黄金仮面の所在についても、髪の毛程の手掛りも掴むことが出来なかった。

捜査係長波越警部は、「蜘蛛男」以来無二の親友でもあり、唯一の相談相手でもあった、民間の智慧袋を失って、非常な失望を感じ、その加害者である黄金仮面に対しては、職務以上の憤激を覚えた。