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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页
幸、F国大使の官邸は、ある富豪の贅沢な大邸宅を譲り受けたもので、多人数の会合にも充分間に合ったので、伯爵の異常な趣味を発揮するには、申分がなかったのだ。
さて、伯爵の今宵の趣向は、偶然にも、甚だ陰欝な種類のものであった。
態と大ホールを避けて、奇妙な装飾を施した七つの部屋が、舞踏場にあてられた。以前の持主の不思議な趣味で造られたこれらの部屋は、非常に不規則な設計で、一時に一室しか見ることが出来ない様に出来ていた。五六間毎に、急な曲り角があって、それを曲る度に、人々は全く別の、ハッとする様な飾りつけに出くわすのであった。
それらの各部屋には、廊下に向って、壁の真中に、ゴシック風の窓が開き、夫々の窓にすき通る様な色薄絹のカーテンがはりつめてあった。
室内の調度にも、奇妙な工夫がこらされていた。ある部屋は椅子からテーブルから、壁も床も青い布で覆われ、それに準じて、例の窓のカーテンは目も醒める様な青色であった。
その次の部屋は、飾りつけが紫色である故に、窓の薄絹も紫色であった。同様にして三番目は緑、四番目は橙色、五番目は白、六番目は菫色と変化しているのだ。