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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页
群集は、怪物の水際立った振舞に、行手をさえぎることも忘れて、ボンヤリとその美しい姿を眺めていた。
走るに従って、うしろざまに飜る金色の衣、それに折からの夕陽が、まばゆいばかりに照り輝き、怪人の飛び去るあとには、黄金の虹が立つかと見えたのである。
だが、群集がうっとりしていたのは、ホンの一瞬間だ。ハッと正気に帰ると、又しても猛烈な石つぶて。一層数を増した警官隊の追撃。
大道の極まる所に、怪賊退がさじと聳え立つは、百五十尺の「産業塔」である。黄金仮面は遂にそこで行詰った。見れば、塔の背面からは、警官の別働隊がひしひしと迫って来る。それを遠まきにして、群集の大円陣。いかなピストルの威力も、敏捷な早業も、この肉の壁に向っては如何ともすることは出来ない。
進退谷まった怪賊は、ジリジリと塔の内部へあとじさりをして行ったかと思うと、最後の一策、九死に一生を求めて、塔内の螺旋梯子に飛びつき、上部へと駈け上って行った。下から見上げると、螺旋階段の十幾曲り、賊は段々小さくなりながら、同じ所をグルグル廻っている様に見える。
階段が尽きると、百何十尺の空中に、探照燈を据付けた、四方開っぱなしの、火の見櫓みたいな小室がある。