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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页
検事のE氏がびっくりして聞返した。
明智はなぜかあたりを見廻し、囁き声になって答えた。
「金堂に安置してある、玉虫厨子です」
アア何ということだ。明智は気でも違ったのではないか。一同ギョッとした様に素人探偵を見つめたまま、云うべき言葉を知らぬ体に見えた。
「君、それは冗談ではないでしょうね。若し本当だとすると、実に容易ならん事件だが……それにしても、法隆寺では、この貴重な国宝がなくなっているのを、今まで気づかなかったのですか。小さなものではあるまいし、どうも少し変ですね」
検事は、信じ兼ねる様に云った。
「ところが、法隆寺の金堂には、別に異状はないのです。玉虫厨子はそこにちゃんとあるのです」
「ホホウ、すると君は……」
「そうです。偽物です。何ヶ月かの間、法隆寺には巧みに出来た偽の玉虫厨子が安置してあったのです」
「偽物? ああ云う古代美術の偽物を拵えるなんて、不可能です。信じ難いことです」
検事を初め一同、容易にこの突飛な報告を信じようとはしなかった。
「法隆寺事務所の管理者もそう云いました。あれが偽物だなんて、そんな馬鹿なことがあるものか。つまらないいたずらは止し給えってね。