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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

流石の侯爵も、一人娘の非業の最期に気も顛動して、大切なお客さまルージェール大使一行のことも忘れ、前後の処置も考えず、ただ美しい姫のなきがらに取り縋って、涙にくれていたが、波越警部達が空しき捜索を切上げて引返して来た時、やっと気を取直して、こういう折は、老練な三好執事の智恵を借りる外はないと、召使達の間にその姿を探したが、どうしたものか老人の影さえ見えぬ。

「三好は、三好はどうしたのか」

侯爵の声に応じて、三好老人の妻女が、おずおず顔を出した。

「三好が、何だか変なのでございます。それから、家に泊っています木場さんも。二人共一間に横になって、グーグー寝込んだまま、いくら起しても目を覚まさないのでございます。どなたか、一度見に来て下さる訳には……」

「眠っているって? それは変だ」侯爵の頭に麻酔剤という考えがひらめいた。「波越さん、一つ見てやって下さいませんか」

警部が三好老人の住居へ駈けつけて見ると、如何にも奥の一間に、老人と、長髪の怪人物とが、腕枕でグーグーと寝入っている。突いても叩いても、死んだ様に他愛もない。寝入る前にお茶を飲んだと見えて、枕下に茶器が出ている。