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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

大真珠

大真珠

その年、四月一日から五ヶ月に亙って、上野公園に十年来の大博覧会が開かれた。東京府市主催の産業博覧会であったが、その規模は全国的のもので、諸外国出品の為に、広大な一館を設けた程である。

呼び物は色々あったが、建造物では、山内両大師の前に聳えた「産業塔」と名づける百五十尺の高塔、余興では南洋土人を加えた喜劇と舞踊の大一座(面白いことには、その喜劇の外題に、「黄金仮面」というのがあった。無論興行主の当て込みである)、そして、出品物では三重県の真珠王が自慢の価格二十万円を唱える国産大真珠であった。しかも、これらの呼び物が、黄金仮面の犯罪に、夫々特別の関係を持っていたのは誠に不思議な因果と云わねばならぬ。

国産真珠というのは、「志摩の女王」と名づけられた、その道の人は誰でも知っている、日本随一の大真珠で、産地は志摩国大王崎の沖合、鮑貝中から発見された珍らしい天然真珠、形は見事な茄子形、三百何十グレーンの逸品である。二十万円は少々懸値としても、一箇豆粒大の品が、一身代の価格を持つということが、田舎の見物の好奇心に投じ、その陳列台の前は、絶間もない黒山の人だかりであった。