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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页

青空文庫

併し、見よ。両船の距離は、二十間、十間、五間と接近して行く。やがて、湖の中心に達した頃には、遂に追手の舟は逃げるボートを捕えることが出来た。

一人の刑事が、敵のボートに飛び移ったかと思うと、いきなり黄金仮面の背後から、組みついて行った。だが……

「ワッ、やられた」

刑事の頓狂な叫び声に、ギョッとした人々の視線が、黄金仮面に集中する。

これはどうしたことだ。そこにあるのは金の仮面とマントばかり、中はもぬけの殻だ。二枚の板を立てて、それに金色マントが着せかけてあったのだ。

黄金仮面の常套手段だ。人なき舟は、向けられた方向に、ただ機械的に進行していたのだ。

では、このボートには、最初から乗手はなかったのか。

そんなことはない。追手の人々は、岸を離れたボートの中に、金色の人の、動く姿を確かに見た。

では、途中水中に身を投じて逃れたのか。

それも不可能だ。この静かな湖面、泳ぐ人影を見逃す筈はない。

上陸したのか。無論そんな隙はなかった。

とすると、小雪は人魚と化して湖の底深く姿を消してしまったのか。それとも、霞となって空高く蒸発してしまったとでも、考える外はない。