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あわもりものがたり

『たぬき汁』以後

佐藤 垢石

佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页

青空文庫

菓子も果物も、自由に買えぬ時代であるから、子供の間食といえば、味噌をなすったお握りを、一日に二、三回は掬ぶ。

お櫃が、いつもからからであるのは当然だ。そこで、第一にこの辛苦の凌ぎについて相談に行けるところは、私の家庭である。だが、これが大問題である。実は、私や家内は、近所や親戚の者に対し、日ごろ腹鼓を打っているような面して体裁をつくっているけれど、私は専ら家内の手腕に信頼している場合である。嫁に行った娘が、悲しそうな顔して相談に忍び込んできたところで、どうにもならぬ。

思案の揚句、娘は勢多県粕川村月田の親戚を訪問した。伊勢崎から月田へ行くには、一旦前橋へ出で、前橋中央駅から上毛電鉄に乗るのであるが、親戚の家は月田の村の奥の奥、赤城山の中腹にある。粕川駅から、一里半はたっぷりあろう。

月田の親戚では、私の娘が泣きごとを申さぬ先に、それと察して甘藷を風呂敷に包んで与えた。嬰児といっても割合に体重のあるのを背中へ括りつけ、左の手に四歳になる子供を吊るようにしているのであるから、いかに欲張っても七、八百匁しか甘藷は提げられない。それでも彼の女、満悦の姿でいそいそと帰途につき、前橋中央駅の改札口をでた。