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あわもりものがたり

『たぬき汁』以後

佐藤 垢石

佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页

青空文庫

ところが、哀れなる事件が起こった。

「おいこら、まてまて」

お巡りさんである。

「その包のなかには、なにが入っている」

「はい」

娘は、面喰ってしまった。

「包をあけてみろ」

「いえ、少しばかり野菜が――」

「あけなさい」

生まれてはじめて、娘はお巡りさんにとがめられたのだ。手をふるわして、小風呂敷を開いたのである。中に、少量の甘藷があった。

「これは飛んでもない。一体、どこから持ってきた。うん」

「粕川の親戚から、頂戴してきました。子供の食べものが足りないものですから――」

「いかん、藷は移動禁止の品だ。ここへ、置いて行け」

置いて行けといわれて、娘は蒼くなった。頑是ない子供が、夜が明ければ空腹を叫ぶので、止むに止まれず親戚へお縋りに行った。そして、赤城の中腹から一里半の路のりを、子供三人と風呂敷とを提げて、粕川駅まで辿りつき、前橋中央駅の改札口を出て、やれやれと思った途端に、おいおいちょいと待てである。揚句に、この藷を置いて行け――。

彼の女は、泣きだしそうになった。

「どうぞご勘弁くださいまし、決して再び親戚から貰ってまいりませんから――この藷を置いて行きますと、うう……」