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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
佐藤垢石『『たぬき汁』以後』。同一底本的分册已合并为一书。收入:泡盛物語、岩魚、烏恵寿毛、越後の闘牛、岡ふぐ談、香熊、熊狩名人、猿ヶ京、支那の狸汁、しゃもじ(杓子)、食指談、純情狸、食べもの、飛沙魚、鯰、入社試験、魔味洗心、老狸伝、わが童心、ミミズ酒と美女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 页
彌藤兵衛牛は、漆黒の毛艶で腹が白い。まことに美しい大きな牛である。二百二、三十貫はあろうか。
これに対して次郎衛門牛は栗毛の二百貫前後の牛だ。双牛、いずれも鋭い角の持ち主だ。双牛、場内を一巡して顔を合わせ、さて飼主が互いに呼吸をはかって、鼻糜を抜こうとすると彌藤兵衛牛は妙に怯えた風で尻ごみをする。周囲を取り巻いた牛方が、イヤイー、イヤイーと声援するけれど、とうとう彌藤兵衛牛は、全身の筋肉を細かく慄わせて、折りあらば逃げ出そうとする動作を示す。不戦、次郎衛門牛の勝ち。
牛は、まことに怜悧であって、顔を合わせた瞬間、敵の気力と闘志を見て、敵わずとさとれば、戦わずして兜を脱ぐものだそうである。きょうは小形の赤牛に分がよく、大形の黒牛には運が悪い。
二十数番取り進んで、きょうの結び相撲である浦柄村の杢平牛と、大内村の孫七牛とが東西から巨姿を現わした。杢平牛は数年間横綱を張っている戦場往来の古強者だ。黒い肌を生漆のように艶々しくみがきあげた毛並みの下に、一尋もあろうと思える肉が細やかに動いている。七、八歳の男盛りの闘牛だ。
これに対する孫七牛はまだ五歳。今春、横綱格に昇ったばかりの新進気鋭の若ものである。