轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
つばくろ
つばくろ
山本 周五郎
「講談倶楽部 秋の大増刊」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,987 字 · 44 页
白くてなめらかでしっとりと軟らかで、そして吸いつくような弾力があった。しかし彼はそれを眼で見たことはなかった。感じとして、記憶には残っているが……おいちは自分の妻であった、いつも自分の側にいた。いつでもその声を聞くことができたし、その姿は手の届くところにあった。
――そうだ、おいちはそのように自分の近くにいたんだ、この手はおいちを抱き、この肌はおいちの肌に触れたんだ。
だがはたして本当に彼女を抱き、本当に肌と肌を触れたろうか。……そうではなかった、自分はおいちを本当には見もせず、抱きもせず、肌を触れもしなかった。風が林を吹きぬけるとき、樹々の幹や枝葉の表てをかすめるように、ただ彼女の表面をかすめたに過ぎない。
「そうだ、おれはおいちという者を知らない、四年もいっしょに夫婦でいて、おれはおいちを少しも知ってはいないのだ」
高雄はその日は夕餉を摂らなかった。
或日、勝江が大助のいないときに云った。
「ふしぎでございますわね、大さん少しもお母さまのことを仰しゃいませんわ、お母さまはどこってききますといやな顔をなさいますの、そしてほかのことに話しをそらしてしまうんですの、……親に早く別れる子は親を慕わないと申しますけれど、もしやお母さまの御病気がお悪いのじゃございませんかしら」