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つばくろ
つばくろ
山本 周五郎
「講談倶楽部 秋の大増刊」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,987 字 · 44 页
うとして来たのだ、……このままがいい、……ここであれを呼ぶことは、大助をも含めて、四人がもういちど苦しむことになる」
「そこを押してお願い申すのでございます、一生のお願いでございます」松助は叩頭しながら云った、「――そしてこれは、奥さまを呼び戻して頂だくことは、いつかは爺からお願い申さなければならないことでございます」
高雄は静かに振返った。松助の云う意味がちょっとわからなかったのである。
「――あれを呼び戻すって」
「初めにお供を仰せつかったとき、爺がなんと申上げたかお忘れではございますまい、……召使の身で、不貞の加担はできませぬなどと申しました、なにも知らず、愚か者のいちずな気持から、ただもう前後もなく申上げたのでございます」
「――なにも知らないとは、どういうことだ」
「まるで違うのです、奥さまには不貞などはございません、爺は二百余日もお付き申していて、この眼でずっと見てまいりました、奥さまには決して不貞などはないのでございます」
「――松助、なにを云いだすのだ」
「お聞き下さいまし旦那さま、私の申すことをどうぞお聞き下さいまし」
松助は訥々とした口ぶりで話しだした。