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つばくろ
つばくろ
山本 周五郎
「講談倶楽部 秋の大増刊」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,987 字 · 44 页
父の雄之丞もむろん同意のうえだったろうが、おいちが孤児になるとすぐ、母の実家の青野へ彼女を預け、そこで十八まで教育したうえ、青野を仮親にして、高雄の嫁に迎えた。
紀平へ来てから二年ばかりは、おいちは悲しそうな浮かないようすであった。この結婚が気に入らないのかとも思えた。母はいろいろ心配したようであるが、高雄は殆んど無関心であった。
一年半ほどして父の雄之丞が亡くなり、その翌年の夏に、母も烈しい痢病で死んだ。そのときのおいちの歎きようは異常であった。こんなにも母を慕っていたのかと、高雄が眼をみはるほど歎き悲しんだ。……あとで思うと、そのときおいちは身ごもっていたので、そんなことも影響したのかもしれない。そうしてそれを機縁のように、おいちは初めて高雄に心をよせてきた。性質もしだいに明るくなり、家事のとりまわしもきびきびするようになった。
大助を産んでから、おいちはさらに美しくなっていった。それは堅い木の実の殻が破れて新鮮な果肉があらわれたという感じである。膚は脂肪がのっていよいよ艶やかに、しっとりと軟らかい弾力を、帯びてきた。自信とおちつきを加えた眸子は、ときに驚くほど嬌めかしい動きかたをする。