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ふしぎなひと
ふしぎな人
江戸川 乱歩
「たのしい二年生」大日本雄弁会講談社/講談社、1958(昭和33)年8月~1959(昭和34)年3月<br>「たのしい三年生」講談社、1959(昭和34)年4月~12月
N4 · 入门 · 新字新假名 · 44,138 字 · 89 页
おとうさんの様子を考えると、じっとしていられないような気持になったからです。
門の前に立って、だんだん暗くなっていく夕ぐれの町を、ぼんやりとながめていると、向こうの町かどに、ひょいと人のすがたがあらわれました。中学の二年か三年ぐらいの少年です。
その少年が、こちらを見て、手まねきしているのです。
「ぼくですか……」
たけしくんは、思わず、大きな声で聞き返しました。
すると、少年は、しっ、というように、口の前に指を立てて、そっと、こちらへ近よってきます。にこにこした、上品な少年です。たけしくんも、思わず、その方へ歩いていきました。
「あっ、小林さん……」
たけしくんは、なつかしそうに、少年のそばにかけよりました。
それは、名たんてい明智小五郎の助手の小林くんだったのです。ヘリコプターの中にかくれていて、たけしくんたちを助けてくれた、あの小林くんだったのです。
「きみが、どうしているかと思って、様子を見に来たんだよ。べつに、かわったことはないかい」
そこで、たけしくんは、おとうさんが明智たんていじむ所へ出かけていったこと、帰ってきてから、まるで人がかわったように、ものをいわなくなったこと、一間にとじこもって、こわい顔をしていることなどを、小林くんに話しました。