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ふしぎなひと

ふしぎな人

江戸川 乱歩

「たのしい二年生」大日本雄弁会講談社/講談社、1958(昭和33)年8月~1959(昭和34)年3月<br>「たのしい三年生」講談社、1959(昭和34)年4月~12月

N4 · 入门 · 新字新假名 · 44,138 字 · 89 页

青空文庫

きえたほうせき

そのポケット小ぞうが、木村さんの家へしのびこんだのです。

かれは、いったい、なにをするつもりなのでしょうか。

きえたほうせき

さて、その夜の八時ごろのことでした。しょさいにとじこもっている木村さんのところへ、どこからか電話がかかってきました。

木村さんは、その電話を聞くと、顔色をかえて、ガチャンと受話きをかけ、あわてて、よびりんをおすのでした。

けたたましいベルの音に、ふたりの書生がかけつけました。

「はい、なにかご用ですか」

「すぐに、明智たんていじむ所の人をよんでくれ。二十めんそうだ」

「えっ、二十めんそうが……」

「二十めんそうが、電話をかけてきたのだ。早くよんでくれ」

書生が、急いで、明智たんていのぶかの、ふたりの男をつれてきました。

「木村さん、二十めんそうから電話がかかったそうですが」

ぶかのひとりが、いきせき切って、たずねました。

「そうです。あいつからかかってきたのです」

「どんなことをいってきたのですか」

「今夜、わたしのほうせきを取りに来るというのです」

「えっ、今夜、ほうせきを」

「そうです。わたしのほうせきは、ぜんぶ、ほうせきばこにおさめて、そこの金庫に入れてあります。