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ふしぎなひと
ふしぎな人
江戸川 乱歩
「たのしい二年生」大日本雄弁会講談社/講談社、1958(昭和33)年8月~1959(昭和34)年3月<br>「たのしい三年生」講談社、1959(昭和34)年4月~12月
N4 · 入门 · 新字新假名 · 44,138 字 · 89 页
大学生は、その人たちを見ると、「あっ、あぶないっ」
と思いました。とらにおそわれたらたいへんです。そこで、ゆうきを出して、みんなの方へ走っていき、息を切らせながら、とらのことを話しました。
「えっ、こうしゅう電話ですって」
「ええ、たしかに、あの中へはいりました」
「それじゃあ、外からドアをおさえてしまえばだいじょうぶだ。そして、こうしゅう電話をぐるぐるまきにすれば、おりにとじこめたようなものだ」
明智たんていのぶかたちは、そんなことをいいながら、だいたんに、こうしゅう電話の方へ近づいていくのでした。
けれども、みんなが、おずおずとこうしゅう電話のそばへ来たときです。こうしゅう電話のドアが、中から、ぱっと開きました。
みんなは、あっといって、にげだしそうになりましたが、ドアをあけて出てきたのは、とらではなくて、ひとりの、しわだらけのおじいさんでした。めがねをかけ、長い白ひげをはやし、古いかたのせびろを着た、弱々しいおじいさんでした。
大学生はびっくりしました。このおじいさんは、よく、とらに食われなかったものだと思いました。
明智たんていのぶかは、あっけにとられながらも、おじいさんの出たあとのこうしゅう電話の中を、そっとのぞいてみました。