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みずぐるま
みずぐるま
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,077 字 · 54 页
和次郎は、やむなく承知した。
まもなくその美若太夫の「みずぐるま落花返し」という芸が始まった。太夫は十五六の少女であった、五尺二寸ばかりある躯はよくひき緊って、胸なども娘らしく発達しているが、しもぶくれの、どちらかというとまるっこい顔だちは、まだほんの少女のようにあどけなく、ものに驚いたような大きな眼や、うけくちのおちょぼ口などは、乳の匂いがするような感じであった。――派手な色柄の武者袴に水浅黄の小袖を着、襷、鉢巻をして、赤樫の稽古薙刀を持っている。口上が済むと、舞台の一方に三人の男があらわれ、紅白の毬を取って美若太夫に投げる。太夫は薙刀を巧みに使って、それをみごとに打ち返すのであるが、三人が続けざまに投げるのを、一つも誤たず打ち返す技は、ちょっと水際立ったものであった。
「――外山のこずえ風立ちて、瀬に舞い狂うさくら花、打っては返すみずぐるま……」
口上がそんな囃し言葉を入れると、小屋いっぱいに破れるような拍手と歓声があがった。
「どうだ、――」と修理が云った、「よく似ているだろう」
「うまいね」和次郎が頷いた、「旅芸人の芸じゃない、筋のとおった稽古をしている」