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みずぐるま
みずぐるま
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,077 字 · 54 页
そして、若尾の心配が決してつまらないものではなく、もしどちらかがそんなふうになるとすると、もう生きて逢う方法はないということが、まるで病気の発作のように激しく彼を緊めつけた。
「そうだ、若尾の云うとおりだ」と和次郎は、自分の感情を隠して云った、「しかしそんなことを考えたらきりがない、病気の性質によっては、同じ土地にいても死に目に逢えないことだってある、そうじゃないか、――急病になることなど考えるよりも、病気にならないように注意することが肝心だ」
若尾はおとなしく頷いたが、眼にはまだ、あとからあとから涙が溢れて来た。
「大丈夫、私たちは必ずまた逢えるよ」和次郎は穏やかに話を変えた、「――江戸へいったら気をつけて、仮にも岩本一座にいたなどということを悟られないようにするんだよ、今日までは幸い無事にやって来たし、ほかに知っている者はないんだから、若尾の性分だと、どんなとき自分から云いだすかもしれないからね、わかるだろう」
「若尾だって、もう子供じゃあございませんわ、そんなこと決して申したりしませんわ」
「それを忘れないように頼むよ」
和次郎は、なお何か云いたそうであった。