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みずぐるま
みずぐるま
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,077 字 · 54 页
「薙刀まで持ち出してか」
和次郎は苦笑した。若尾は慌てて、うしろに隠していた薙刀をもっと隠そうとしながら赤くなった。
「いいえ、これは、これはいま、ちょっと稽古をしようと思って、それで」
「新しい手の稽古か」と和次郎は笑いながら云った、「おまえ新しい水車の手を編みだすと云って、たいそう張切っていたそうじゃないか」
「親方は、そんなことまで申上げましたの」
「編みださないまえでよかったと思うね」と和次郎は云った、「若尾はどうかすると、姫君にまでそれを教えかねないからな」
「まあそんな、いくらわたくしだって、そんな、――まさかと思いますわ」
若尾はつんとして薙刀を肩へかついだ。和次郎は振向いて見ながら静かに笑った。二人は並んで、雨の中を住居のほうへ去っていった。