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ヨブきこうえん
ヨブ記講演
内村 鑑三
丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页
である。第二は「望むらくはわが言書に記されんことを」である。第三は「望むらくは鉄の筆と鉛とをもてこれを永く磐石に鐫りつけ置かんことを」である。これは友の無情に失望して、今の人の誰人にも訴うるの無益を悟りて後世に知己を求めんとの心より出でし言である。まずわが言の書き留められんことを望み、次には書物に記されて遺らんことを望み、最後にはその言が鑿を以て磐に刻まれてその中に鉛を流しこんで永久に遺らんことを望む。思想は順を逐うて強まるのである。かくして彼が己の言を後世に遺すときは、必ず彼の罪なきに受けし災禍を認めて彼の同情者、弁護者、証人となるものが出ずるであろうとの期待を抱いたのである。(王の功績などを石に刻みてその永久に伝わらんことを期する風は古代東方諸国においては盛であったと見え、今日時々この種の石が発見せられて、歴史学及び考古学上の有益なる資料となる事がある)。
◯しかしこの願を発しつつある時、ヨブにまた一の思想が起った。よし磐にわが言を刻して後世に遺すも後世の人もまた人である。現代の人と同様に、また彼の三友と同様に人である。しからば友を後世に求めんとするは、焦土に樹木を求めんとする類であって全く無効であると。