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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

吉川英治『三国志(八)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 页

青空文庫

けれど、帝が下問すると、

「そんなことは、深くお迷いになるまでもないことかと思います」

と、その定見を、するすると糸を吐くように述べた。

「孔明が呉をけしかけたのは当り前な考えです。呉がこれに応じるのもまず修交上当然といえましょう。けれど呉には陸遜という偉物が軍をにぎっています。また、呉が率先挺身しなければ、条約に違うという理由はありませんから、攻めんといい、攻めるぞとみせ、実は軍備ばかりしていて、容易にうごかず、蜀の戦いと、魏の防ぎを、睨み合わせて、ひたすら機を測っているものにちがいありません。――故に、呉の態勢は虚です。蜀の襲攻は実です。まずもって、実に全力をそそぎ、後、虚を始末すればよろしいでしょう」

「なるほど、実にも、そうであった」

いわれてみると、こんな分りきっていることを、なんで迷っていたのかと魏帝は膝を打って嘆じた。

「卿はまことに大将軍の才だ。卿をおいては孔明を破るものはない」

嘆賞のあまり魏帝はその場で彼を大都督に封じ、あわせて、総兵之印をも取り上げて、汝にさずけんと詔りした。

仲達は甚だ迷惑そうな顔をした。なぜならばその総兵之印は、全軍総司令たる曹真が持っているものである。