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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

吉川英治『三国志(八)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 页

青空文庫

二

二

姜維は裴緒に会ってもいないのであるが、裴緒の偽の使者であることは、天水の城へくると、すぐ看破していたのであった。

「およそ戦局を大観して、その首脳部の指揮者を察し、兵の動かし方を見ていれば、田舎にいても、それくらいなことは分ります。――思うに孔明の計らんとするところは、太守を天水の城から誘い出して、途中に兵を伏せて撃滅を加え、一方、奇兵をこの城の留守へまわして、虚を襲い、内外同時に覆滅して、この一郡を占領しようというつもりでしょう。真に見えすいた計略です」

彼は、馬遵とその一族へ向って、掌を指すように、敵の偽計を説いて教えた。馬遵は、げにもと悟って、

「もし姜維が、出陣を止めてくれなかったら、わしは目をふさがれて、敵の陥し穽へ歩いて行ってしまうところだった」と、今さらの如く戦慄して、彼の忠言に、満腔の謝意を表した。

年こそ若いが、姜維に対する馬遵の信頼は、そのことによって、古参の宿将も変らない扱いを示して、

「きょうの危難はのがれたが、明日からの難には、いかに処したらいいであろう」

かまでを、姜維に問うようになった。

姜維は、城の背後を指さして、

「目には見えませんが、あの搦手の裏山には、もう、蜀軍がいっぱいに潜んでいましょう。