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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

吉川英治『三国志(八)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 页

青空文庫

……さすがは諸葛亮。さりとは智者なるかな」

彼は正直に孔明を惧れた。そしていよいよ守るを主としていた。

「鹵城にある蜀兵を、深く探ってみましたところ、案外少数です。大軍と見せていたは孔明の軍立てによる用兵の妙で、味方の兵力をもって包囲すれば、おそらく袋の鼠でしょう」

郭淮はしきりに主張した。良策もなきまま以後、消極的に堕し過ぎていたことを自身も反省していた仲達は、彼に説かれて、

「では、動かずと見せて、急に前進し、一挙に鹵城を包囲してしまおう。それが成功すれば、後の作戦はいくらでも立つ」

夕陽西へ沈む頃、ここの大軍はいちどに発足した。鹵城はさして遠くない。夜半までには難しいが、未明には着ける予定である。

途中の湿地帯と河原と山とを除くほかは、すべて熟れたる麦の畑だった。蜀の斥候兵は点々と一町おきにその中に隠れていた。

一条の縄から縄が鹵城のすぐ下までつながっていた。一兵がその鳴子を引くと、次の兵から次の兵へ鳴子を伝え、電瞬の間に、(魏の襲撃あり)――は蜀軍のうちへ予報されていた。

で、孔明は、来るべき敵に対して、策を立て、配備をなし、なお充分、手具脛ひいているほどな暇を持っていた。