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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

吉川英治『三国志(八)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 页

青空文庫

「かくの通り、彼が※(「灰/皿」、第3水準1-88-74)を捨てて逃げ惑うほど、追いつめ追いつめ、こッぴどく懲らしめてくれました」

と、大いに功を誇れば、姜維、張嶷、王平なども、それぞれその夜の功を称えて、

「木牛流馬一千余車。それに積んだ糧米だけでも二万二、三千石は鹵獲いたしました。これで当分、軍糧は豊かです」と、各※(二の字点、1-2-22)、勇み矜らぬはなかった。

「そうか。よくこそ」と孔明は、それから各自の者へ向って、賞辞と宥りを惜しまなかった。けれど彼の心中には、拭いきれない一抹のさびしさがあった。

いまもしここの陣に、関羽の如きものがいたら、こんな小戦果を以て、誇りとするのはおろか、到底、満足はしなかったろう。かえって、

(丞相からこれほどの神謀を授かりながら、肝腎な司馬懿を取り逃がしたことは、なんとも無念であります、申し訳もありません)

慙愧叩頭して、その罪を詫びて止まないに違いない。

(ああ、関羽亡し、張飛なし、また幾多の旧幕僚もいつか減じて、ようやく、蜀中人はいなくなった)

口には出さないが、孔明の胸裡にある一点の寂寥というのは実にそれであった。