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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
吉川英治『三国志(八)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 页
「祁山は蜀勢の根本だ」
「しかし孔明は蜀全体の生命ともいえましょう」
「――だから大挙して祁山を襲い、わしは後陣として続くが、実は、不意に転じて、葫芦谷を急襲し、孔明の陣を蹴やぶり、谷中に蓄えている彼の兵糧を焼き払う考えなのじゃ。兵機は密なる上にも密を要す。余りに問うな」
「さすがはお父上」と、息子達はみな服して、父の計をたたえた。司馬懿はまた張虎、楽などを呼んで、
「自分は、後陣としてゆくが、汝らはなお我が後から続いてこい。なお硫黄焔硝を充分に携えて来るように」といいつけた。
孔明は日々、葫芦の谷口に近い一高地に立って、遥かに、渭水と祁山の間を見ていた。約一ヵ月近くも、彼は味方の敗け戦のみを眺めていたわけである。
その危険なる中間地帯を高翔の輸送隊がのべつ往還して、わざわざ敵の好餌となっていたのも、祁山の兵が、戦えば敗れ、戦えば敗れている蜀勢も、もとより彼の意中から出ている現象で、彼の憂暗となるものではなかった。
その日。――かつて見ない大量なる魏の軍馬が、またかつて見ざる陣形を以て一団一団、さらにまた一軍また一軍と、祁山へさして、堂々と前進してゆくのが遠く眺められた。