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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

吉川英治『三国志(八)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 页

青空文庫

蜀の使者はほっとして、その顔を仰いだ。

「大儀大儀。せっかくのお贈り物。これは納めておこう」

仲達はそういって、なお使者をねぎらい、酒を饗して、座間に訪ねた。

「孔明はよく眠るかの」

いやしくも自分の仕える孔明のうわさとなると、軍使は杯を下におき、一言の答えにも身を正していう。

「はい。わが諸葛公には、夙に起き夜は夜半に寝ね、軍中のお務めに倦むご容子も見えません」

「賞罰は」

「至っておきびしゅうございます。罰二十以上、みな自ら裁決なすっておられます」

「朝暮の食事は」

「お食はごく少なく、一日数升(升は近代の合)を召上がるに過ぎません」

「ほ。……それでよくあの身神がつづくものだの」

そこでは、さも感服したような態だったが、使者が帰ると、左右の者にいった。

「孔明の命は久しくあるまい。あの劇務と心労に煩わされながら、微量な食物しか摂っていないところを見ると、或いはもういくぶん弱っているのかも知れない」

四

魏の陣から帰ってきた使者に向って、孔明は敵営の状と、司馬懿の反応を質していた。

「仲達は怒ったか」

「笑っていました。そして折角のご好意だからとて、快く贈り物を納めました」