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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

吉川英治『三国志(八)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 页

青空文庫

各※(二の字点、1-2-22)もあたら命を無益に捨てず、われらと共に蜀へ降れ」

と、声を嗄らして叫んでいた。

馬遵と夏侯楙が、矢倉の上から望み見ると、その甲といい馬といい年頃といい、姜維にはちがいないが、どうもいっていることは合点がゆかなかった。

「やあ、矢倉の上におわすは、夏侯※(「馬+付」、第4水準2-92-84)馬ではないか。御身より自分へ宛てて、蜀へ降れ、蜀へ降ってくれれば、予の一命が助かるのだと、再三の書面があったればこそ、かくいう姜維は身を蜀へ投じたのに、何ぞはからん、その身一つ遁れて、すでにこの城に帰っていたか。――覚えていよ。この恨みは、弓矢で返すぞ」

城下の姜維は、罵り罵り攻めていたが、やがて暁近くなると、攻めあぐねたか、兵をまとめて引揚げてしまった。

もちろんこれは、真物の姜維ではない。年配骨格のふさわしい者を選んで孔明が仕立てた偽者であった。けれども夜中の乱軍中に壕を隔てて見たことなので、馬遵にも夏侯楙にも真偽の見分けはつかなかった。そして大きな疑いを姜維に対して強めたことだけは否まれない。

一方、本物の姜維は、依然冀城にたてこもって、孔明の軍に囲まれていた。