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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

吉川英治『三国志(八)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 页

青空文庫

――で、わざとご辺たちを彼の望みどおりに差し向けるのである。途中、変あらばすぐこうこうせよ」と、何かささやいた。

次いで、関興、張苞のふたりへ、おのおの一軍を与えて、祁山の嶮岨へさし向け、後また、馬岱、王平、張嶷の三名には、べつに一計をさずけて、これは本陣付近に埋伏させておいた。

かくとは知らぬ魏軍は、大将曹遵、朱讃などの二万余騎を、ひそかに祁山の後方へ迂回させておいて、蜀軍の動静をうかがっていた。

――すると、たちまち、

「敵の関興、張苞の二軍が、蜀陣を出て、味方の夜討ちに向った」という情況が伝わったので、曹遵らは、しすましたりと、作戦の思うつぼに入ったことを歓びながら、いよいよその事実を知るや、突如山の蔭を出て、蜀の本陣を急襲した。

敵の裏を掻いて、その手薄な留守を衝こうとしたものである。ところが、孔明は、すでに、その裏の裏を掻いていたのだった。

わあっと、潮の如き吠え鳴りを揚げて、魏の勢が、蜀本陣へ突入して見ると、柵の四門に旗風の見えるばかりで、一兵の敵影も見えない。のみならず、たちまち山と積んである諸所の柴がバチバチと焔を発し、火炎天をこがし地を沸らせた。