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ぼうれいホテル

亡霊ホテル

山本 周五郎

「新少年」1937(昭和12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,706 字 · 20 页

青空文庫

「彼等は×××国の間諜だった。あの給仕は支那人で、勿論彼等の手先なのだ。――亡霊の話は、あの部屋へ人を近寄せないためだったが、その訳は彼処が秘密の連絡に使われていたからだ。どういう方法で連絡を取ったかと云うと、……あの紙を裂くような音、あれがその機械だ。別の間諜が第×聯隊の横に張込んでいて、聯隊の移動状態を探り、それを光線通信であの部屋へ送っていたのだ」

「ですが先生、若し夜間に光線で通信すれば直ぐ発見されるではありませんか、――現にゆうべ僕たちが見張っていたのに、別になんの光も見えなかったですよ」

「だからさ、見えない光線を使ったのだ」

博士は微笑して続けた。

「つまり赤外線だ。兵営の附近から特殊の機械で、この部屋へ向って赤外線を放射する、君も知っている通り赤外線は人間の眼には見えないものだ。然し同じ受感装置には感じるから、光線を受けると同時に自動的に動きだし、眼に見えぬ通信を完全に記録するんだ。――ゆうべ壁のところでカチリと音がして、小さな火花が閃めいたろう。あのとき記録装置が活動を始めたのだ。それから白い亡霊……あれは例の支那人給仕が化けたのだが、あれがその記録を取外し、朝になって彼の三人の外人に給仕をする時、そっと手から手へ渡すという仕組みなのさ……実に敵ながら天晴れ、赤外線を使ったのは間諜戦はじまっ