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にんげんせいかつのむじゅん

人間生活の矛盾

丘 浅次郎

「中央公論」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,798 字 · 36 页

青空文庫

いくら制度ばかりを改良しても、肝心な社会本能が退化しては、めいめいの了見が自己本位的になるために、満足な結果は得られぬ。何度も姑息な改良を施しても社会生活が相変らず思うようにならぬのを見て、これは一回全部を覆して根底から新たに築き直さなければ駄目であると考える人も出てくるが、かような人が殖えると実際に革命が行なわれるに至る。しかし革命が行なわれた後の状態は如何というと、一時だけ幾分か胸の透いた感じはあるかも知れぬが、社会生活の不完全なことは、やはり従前のとおりで苦しさは増すばかりである。これでは革命などはなかった方がましと考える人が無論出てきて、これが相当な数に達すると、革命派を倒そうと企てる。革命の直後にいつもかならず反革命の起るのは右のごとき理由による。階級本能が復旧せぬ限りはいかなる改革を試みてもとうてい理想的な社会生活に戻すことはできぬ。

社会生活の破綻がだんだんと顕著になってきては誰も彼も苦しみに堪えぬゆえ、何とかしてこれを押え防がなければならぬが、その役にあたったのが教育家と宗教家とである。その中で宗教家の方は、階級本能の盛んであった頃にはすこぶる勢いが強くて、ほとんど抵抗し得る者がなかったが、この本能の退化とともに次第に衰え、しばらくは上に位する者の手先となって服従と諦めとを説法しつづけた