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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
「…………」
「磔茂左衛門は上州の義民であります。古来上州人は義に篤い。一諾を重んじて命を捨てることを何とも思わない。私はその上州人であります。生れ在所は安中町、ケチな野郎でございますが、何うぞ宜しくお見知り置きを願い上げます」
と赤羽君は博奕打の真似をした。大喝采だった。
「野崎君」
と立花君が指名した。
「静岡県の比でないとは何だ? 君は清水の次郎長を知らないか?」
と野崎君は赤羽君を睨みつけた。何方も何方だ。ミッション・スクールの教室で同郷出身の博奕打を自慢し合っている。
「文句があるなら後から聞こう」
「野崎君、願います」
と立花君が促した。
「僕は静岡県、河原君と同県ですが少し西へ寄って、遠州であります。遠州人は上州人よりも強い」
「強くない」
と赤羽君が弥次った。
「いや、強い。その証拠に、僕の村には上州無宿の墓が二三十ある。これは昔、上州の博奕打が喧嘩に来たのを皆叩き殺してしまったのだ。殺した方と殺された方と何方が強いんだ?」
と野崎君は側に坐っていた赤羽君の頭をコツンとやった。
「こん畜生!」
と赤羽君は立ち上りざま、野崎君に横ビンタを食わした。
「何をしやがる」