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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「耶蘇! 非国民!」

「そんな乱暴な話があるか?」

「貴様のような意気地なしがいるから、ロシヤが威張るんだ」

と野崎君は飛びかゝりそうな権幕だったが、

「こら、分らず屋!」

と赤羽君が組みついて、止めてしまった。

「分らず屋とは何だ?」

「まあ/\、落ちつけ」

「失敬な」

「戦争なんか誰だってしたかないんだ」

「君は今更非戦論者になったのか? 露探まがい!」

と野崎君は睨みつけた。仲よしだから、まがいと濁したのだった。

「感情問題じゃない」

「分っている。正々堂々の議論だ」

「議論でもない。日本は今悪い相手に引っかゝって、戦争するより外仕方がないんだ。勝つも負けるもない。やらなければ亡びるから、否応なしに何処までもやるんだ」

と赤羽君は容貌愚のようでも、大勢が分っていた。一同妙に感激を受けた。皆、実際もう議論じゃないという気になった。昨今、赤羽君は成金として自伝を郷里出身の文士に頼んでいるそうだが、この辺は特筆大書をさせてやりたい。

戦争は直ぐに始まった。しかし連戦連勝で案じるほどのこともなかった。こんな風なら、もっと早くやれば宜かったと、恐露病は忽ちにして一掃された。