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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
今度町会議員に当選したよ」
「例によって飲むだろう?」
「うむ。その方も大発展らしい」
と小松君は尚お話したいようだったが、授業があった。鐘が鳴る。昔懐しい響だった。
郷里から任地までの間に、私は神戸の駅で赤羽君に会った。唯五分の停車時間を打ち合せて置いたのだった。雨の晩にも拘らず、赤羽君はプラットホームに出ていてくれた。
「何うだい?」
と私は窓から乗り出して、赤羽君の前垂姿を見下した。
「駄目だよ」
と赤羽君は背広服の私を見上げた。立脚地が上と下の通り、得意と失意の二人だった。私は新任の口のことを簡単に話した。赤羽君は現状について二言三言愚痴をこぼした。
「まあ/\、辛抱するんだよ」
「君は勉強したからね。僕とは違う」
「何あに」
「野崎君は何うだい?」
「去年、横浜の商館へ入ったよ」
「それは知っているが、勤まるのかい?」
「可なりやっているようだよ」
「月給は幾ら取る?」
「三十円だけれど、ボーナスが半分つくそうだから、矢っ張り僕ぐらいになる。尤も僕は一年で昇給する約束だけれども」
「君は当り前だけれど、野崎は巧くやっている」
「竟に所を得たのさ」
「彼奴はおれと似たり寄ったりだったがなあ」