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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
「……えりにえって然ういう因縁つきの娘さんを貰うことは考えものと存申候。死霊は執念深きものにて候。河原姓から河原姓へ嫁したのでは全く同姓ゆえ、矢張り堪忍致さぬことゝ存申候。つまり取り殺すことゝ存申候。取り殺さぬまでも、祟りにて、子供が出来ぬことゝ存申候。万一出来ても、祟りにて、育たぬことゝ存申候。村にもその例有之候。御存知の通り、蔦屋は上から順々に取られ申候。万一育ちても、祟りにて、香しきものには相成るまじく存申候。この辺のこと何卒よく/\お考え被下度候」
と父親に内証で注意して寄越した。
式には両親が遠路を遥々来てくれた。婿も嫁の父親も仲人も皆同じ学校に勤めている関係から、校長初め同僚全体が列席して、ナカ/\賑かな披露だった。一世一代のことだから、私はその折の光景を能く覚えている。老河原さん夫婦は涙を流して喜んだ。此方でも母親が泣いていた。その後度々結婚式に招かれて目撃したことだが、母親は大抵泣く。感極まるほど嬉しいものと見える。校長が同僚を代表して祝辞を述べた後、
「序をもって、私は一個人として新家庭に円満法を一つ餞け致したい」
とやり出した。