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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

浩子も嫁にやらなければならない」

「私も考え出すと寝られないことがございますのよ」

「奏任待遇の先生がまさか子供を奉公に出す次第にも行くまい」

「はあ」

「教育家って変なものだね。人の子供の教育をしながら、自分の子供の教育が出来ない。尤も数を生み過ぎたかも知れないけれど」

「半分なら宜いんですけれど」

「いや、半分でもむずかしい。今の俸給じゃ迚も駄目だ」

「でも、およしになれば尚お駄目になりますわ」

「よして恩給を取る」

「恩給は三分の一でございましょう?」

「いや、東京の私立学校へ行って稼ぐんだ。恩給丈けが浮くよ。彼方は時間給だから、稼げば稼ぐ丈け余計取れる」

「心当りがございますの?」

「あるさ」

「月給は幾らぐらい?」

「月給じゃない。時間給だよ。一時間二円として、一週に三十時間教えれば、二三が六の六十円。四週間と見て、四六二十四の二百四十円さ。それに恩給が六十円と見て、合計三百円の収入になる」

「あなた、然うして戴きます」

「今直ぐって次第には行かない」

「来月からでも宜うございますわ」

「夏休みに行って運動して来る」

と私は方針を変えることに決心した。

丁度その頃、赤羽君が訪れてくれた。