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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
占部さんの家は教会の裏だった。私が入って行ったら、先生自ら出て来て、
「やあ。能くお出なさいましたね」
と喜んで迎えてくれた。
「先生、明治学園のお話を伺いに上りました」
「さあ、何うぞ此方へ」
「先生、耶蘇のお話じゃないです」
と私は断って上り込んだ。金ピカの洋書が沢山並んでいるのに驚いて、
「これは何の御本ですか?」
と訊いて見た。
「主に神学書です」
「アメリカから持ってお出になったんですか?」
「然うです」
「綺麗ですな。僕は西洋の御本は初めて見ます」
「君も今に明治学園へ入ると、斯ういうものを読むんですよ」
と占部さんはニコ/\した。
「先生、何んな学校ですか? 僕はこの間から明治学園のことばかり考えています」
「大きいですよ。地面が三万坪からあって、建物は皆煉瓦造りの西洋館です」
「はゝあ」
「時計台があります。一間ぐらいな大時計ですが、何ういう次第か、いつも五分後れています」
「はゝあ」
「寄宿舎は三階造りで、塔は五階になっています。富士山が能く見えます」
「はゝあ」
と私は一々感心した。占部さんは尚お、
「然う/\。明治学園の写真がありましたよ」
と言って、大きなのを二三枚見せてくれた。