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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「先生」

「何ですか?」

「敵を愛していたら、日本は今頃支那に取られています」

「さあ。それは何うでしょうか?」

「学校の先生は然う仰有っています」

「戦争ということが既にいけないのです。あれは拠ろない間違で、涙を流しながらやったのです」

「しかし又やらなければなりません。日本は今度おとなしかったから、大損をしたんです」

と私は時事問題を持ち出した。四海同胞は合点行ったが、非戦論は腑に落ちなかった。学校の先生の意見によれば、日本は英仏独の干渉の為め遼東半島を支那へ返したのだから、将来この三敵国にうんと利息をつけてお礼返しをしなければならない。その責任はかゝって諸君の双肩にあると教えられていたのだった。

「しかし友さん、国分という子がそんなに憎いのでは毎日不愉快でしょうな?」

と占部さんは元来の問題に戻った。

「はあ」

「思い切って堪忍してやって御覧なさい。気分が清々しますよ」

「毎日生意気をしますから、堪忍する暇がありません」

「余程悪い子ですな?」

「先生に叱られてばかりいます。それが口惜しくて、僕に突っかゝって来るんです」

「成程」

「大きくなって縛るまで待っていないで、喧嘩をしてしまおうかとも思っています」