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しゅっけとそのでし
出家とその弟子
倉田 百三
「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页
それを妨げる力はなんでしょう。私はその力をこわしたい。私はたまらない気がします。
善鸞 その力は私の恋を破った力と同じ力です。その力はなかなか強いものなのです。私はその力を呪います。しかしそれをこわす力がありません。
唯円 それは社会意志です。世の中のかたくなな無数の人々の意志です。その力は私のお寺の中をも支配しています。私はこのあいだその力に触れました。あゝどうして世の人はもっと情けを知らぬのでしょう。おのれの硬い心が他人を苦しめていることに気がつかぬのでしょう。私はなさけなくなります。
善鸞 私が今父に会う事は父のためにもなりません。たとい父がそれを許してくれても。浮き世の義理というものは苦しいものです。私は幼い時からその冷たい力に触れました。実は私は父の妻の子では無いのです。
唯円 (驚く)それは初めて承ります。
善鸞 私の母は稲田のある武士の娘でした。父が越後にいる時に父の妻はなくなりました。父は諸方を巡礼して稲田に来て私の母の父の家に足を止め、稲田に十五年すみました。その間に私の母と父とは恋に落ちました。私はそのようにして生まれたのです。私は父母を父母と呼びうるまでには暗い月日を過ごしました。