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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

私は父をとがめる気は少しもありません。そこには人生の愛と運命の悲しさがありましょう。

唯円 あなたの母上はどうなされました。

善鸞 父が京へ帰るとき稲田に残りましたが、もはや死んでしまいました。

唯円 ほんとうに世の中は限りもなくさびしいものでございますね。

善鸞 私には世界は悲しみの谷のごとくに見えます。

両人沈黙。

唯円 私はきょうはこれでお暇申します。

善鸞 そうですか。きょうはうれしい気がしました。私はもっと話したいのですけれども。

唯円 私もいつまでもいたいのですが、お師匠様に内緒で来たのですから。

善鸞 私のために苦しい思いをさせますね。許してください。きょうはいろいろと考えさせられました。ありがたい気がいたします。

唯円 私はこんなに充実して話した事はありません。きっとまた参りますからね。

善鸞 できるだけたびたび来てください。私はいつもさびしいのです。

唯円 では失礼いたします。(立ち上がり、入り口のそばまで行き振り返り、力を入れて)もしおとう様が会うとおっしゃればどうなされます。

善鸞 (考えて、きっぱりと)私は喜んで会う気です。

唯円 ではさようなら。

善鸞 (見送る)さようなら。