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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

唯円退場。善鸞しばらく立ったまま動かずにいる。やがて部屋の中をあちこち歩く。それから柱に背をあてて立ったままじっと考えている。

浅香絹張りの行灯を持ちて登場。入り口に立ちながら善鸞を見る。善鸞浅香に気がつかずにじっとしている。

浅香 善鸞様。

善鸞 (浅香を見る)浅香お前はどう思う。ここに父と子とがある。父は諸天の恵みに浴して民は聖者と仰いでいる。子は酒肉におぼれて人は蕩児とさげすんでいる。父と子とは浮き世の義理に隔てられつつ互いに慕うている……

浅香 まあ、だしぬけに……(注意を集中する)

善鸞 互いに飢えている。しかし会えば父の周囲の美しい平和が傷つけられる。人々は猜疑と嫌悪の眉をひそめる。父の一身に非難が集まる。その時に子はどうしたらよいのであろう。会うのがよいか会わぬがよいか。

浅香 (声をふるわす)会わぬがよい。

善鸞 もし父が招いたら、迷える子よ、かえって来よと言ったら。

浅香 (苦しげに)会わぬがよい。

善鸞 おゝ。(よろめく。柱で身をささえる)

浅香 善鸞様。善鸞様。(はせよって善鸞を抱く)

善鸞 私はわからない。私は思いにあまる。私は……助けてくれ。