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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

綱手の、身体中の、血管が、凍えて、止まってしまった。

(牧の倅――百城)

「女共が時々、噂しておるげじゃが、調所殿の、二世さんでもあったかな」

「いえ、決して左様な」

袋持は、気の無さそうに答えて、机へ向った。

「牧の倅を存じておろう。百城月丸」

綱手の、眼は異様に光って、脣が、顫えていた。

「百城様は――牧様とは、あの、牧――仲太郎様の――」

兵太夫は、眉をしかめて、じっと綱手を見ていたが、

「何んとした」

只事でない綱手の顔を、じっと見て

「如何したのじゃ。大層、顫えておるではないか」

綱手は、蒼白になって、膝も、手も、口も顫わせていた。

「何処ぞ、悪いのかの」

綱手は、黙って、首を振った。袋持が、振向いた。そして、じっと、綱手を睨みつけるような眼で眺めていた。

綱手の頭には、熱い火が、狂い廻っていた。しかし、額は冷たくて、眼は、空虚であった。何を見ているのか判らなかったし、何処にいるのかも、判断できなかった。

(月丸様は、牧様の御息子――)

そんなことが、世の中にあろうとは思えなかった。

(あのやさしい月丸様が、父を殺した敵の倅?――)

月丸の言葉を、眼を、振舞を、いろいろに想い出してみたが、そんな月丸とは、思えなかった。