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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
飛散ったのは、破れた窓ガラスのかけらであった。
「いたずら小僧め。この裏の広っぱへ子供達が集まって仕様がないのですよ」
家主が腹立たしくいった。
「素早い奴だ。もう影も形もありやしない」
明智は呟きながら、窓から帰って来たが、ふと足元に落ている白いものに気づいて、それを拾い上げた。
小石を包んだ紙切れだ。拡げて見ると、鉛筆で何やら書いてある。
『おせっかいは、止せといったら止さぬか。これが二度目の、そして最後の警告だ。後悔してもおっつかぬ事が起るぞ』
例の怪物から明智への警告だ。
「畜生ッ」
叫ぶなり、明智は窓を開いて、外へ飛び出して行ったが、暫くすると、空しく立戻って来た。
「どうも不思議だ」
彼は、さっき青山で怪屋の探検を済ませた時と同じ様な、一種異様の困惑の表情を示して、呟いた。この事件には二重の底があって、彼はその不気味な底を、チラと覗いた様な気がしたのである。
家のまわりを一週して、隈なく探して見たけれど、石を投げた奴はどこにもいなかった。夕暮れとはいえ、まだ物が見えぬ程ではない。その見通しの広っぱを、たった二三十秒の間に、どうして逃げ去ることが出来たのであろう。