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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
と答えたことだ。即ち、さっき二階の書斎が暗くなったのは、停電ではなくて、何者かがあの部屋のスイッチをひねったものに相違ない。
食事が終ると、一同客間に帰って、夫々居心地のよさそうな椅子に、身を休めて、ポツリポツリ、引立たぬ会話を取交わしていたが、そこへ書生が入って来て、明智さんに電話だと告げた。
見ると、いつの間に出て行ったのか、一座から明智の姿が消えていた。
洗面所へでも行ったのかと、ややしばらく待って見たが、一向帰って来る様子がない。
「あの方は、二階の書斎の鍵を持ってお出でだから、ひょっとしたら、一人であすこへ上って行かれたのではありますまいか」
斎藤老人が気づいていった。
そこで早速、書生を見にやったが、明智はそこにもいないことが分った。
「変だね。兎も角、その電話をここへつないで見給え」
三谷の指図で、客間の卓上電話が接続された。
「モシモシ、明智さんは、今ちょっと、どっかへ行かれたのですが、何か急なご用ですか」
三谷が呼びかけると子供子供した甲高い声が、それに答えた。
「僕、明智の事務所のものですが、早く先生を呼んで下さい。大変なことが起ったのです」