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きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页

青空文庫

明智が文代をこんな所へ呼ぶのも変だし、第一、急用があれば、自動車などを頼まずとも、電話で事がすむ筈ではないか。それに、そんなに探しても、あの目立つ服装の文代が見つからぬというのも、何とやら唯事でない。

そこで、小林少年は、国技館の外の自働電話から、聞き覚ていた畑柳家の番号を探して、電話をかけて見た処、案の定、明智は同家にいることが分った。そこで、善後の処置を相談する為、早速やって来たというのである。

「その文代さんを呼び出した男というのは、きっと岡田の配下のものです。まさか、岡田があの顔で、人込みの中へ現れる筈はありませんからね」

三谷青年は、今度の犯人を、岡田道彦と極めてしまっている。

「マア、どうしましょう。私達の事件を御願いしたばっかりに、文代さんというお方を、そんな目に合わせてしまって。あいつは、何というひどいことをするのでしょう」

倭文子も、さなきだに悩ましき眉を、一層しかめて、悲しげに、腹立たしげに呟く。

「文代さんは、僕の筆蹟をよく知っている筈です。あの人がだまされた程だから、賊の偽手紙は余程巧に出来ていたのでしょう。菊人形……アア、あいつの考えつきそうなことだ。