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きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页

青空文庫

我々は決定的な証拠品によって、判断しなければなりません。その証拠品が、多分今に……アア、来ました。さい前から、僕はこれを待ち兼ねていたのですよ」

丁度その時、外に人の足音がして、寝室のドアが開き、小林少年のリンゴの様な頬がのぞいた。

「小林君、アア、君はあれを手に入れて来たね」

明智が、少年の顔色を読んでいった。

「エエ、案外訳なく見つかりました。やっぱり、あの近所の歯科医院でした。頼んだら、すぐ貸してくれましたよ」

少年は、快活にいって、小さな紙包を差出した。

明智はそれを受取って、テーブルに置き、文代さんに命じて、戸棚から、もう一つ、同じ様な包物を取出させた。テーブルの上には、さっき恒川警部が持参したのと合わせて、三つの小さな包が並べられた訳だ。

「恒川さん、それを開いて、よく見くらべて下さい。その中のどれか二つが、全く同じであったら、問題は忽ち解決するのです。しかし、恐らく……」

恒川氏は、言葉半ばに、明智の心を察して、あわただしく、包を開いた。赤いゴム様のかたまりが一つ、白い石膏のかたまりが二つ。三つの包からころがり出した。

すべて人間の歯型である。