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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
明智は肩の痛みに、仕方なくベッドに横たわったものの、まだあきらめ切れぬ体だ。
間もなく下の玄関から自動車が来たとの知らせ。恒川氏と小林少年とは、外套に片手を通しただけで、階段をかけ降りた。そして、二人を乗せた自動車は畑柳家へとフル・スピードで走り出した。
恒川警部と小林少年が、畑柳邸に着くと、真青になった三谷青年が、あわただしく出迎えて、一間に招じ入れた。
「丁度今明智君と事件について話し合っていた所です。明智君は、賊はまだ生きている、犯罪は落着したのでないと主張していましたが、それがこんなに早く裏書されようとは、実に意外でした」
恒川氏は、賊からの予告の手紙のこと、続いて当家から電話があったこと、明智はまだ外出できぬので、兎も角小林少年を同行してかけつけたことなどを、手短に語った。
「賊が、今日の事件を予告したとおっしゃるのですか」
三谷がいぶかしげにたずねる。
「そうです。その手紙を読んでいる所へ、申合わせたように、あなたからの電話でした」
「賊というのは、例の唇のない奴のことでしょうね」
「無論、あいつです。風船で逃げた奴は換玉だったと考える外はありません」